二度目の玉砕〜第6回全日本マスター&シニア選手権大会(1)落涙編〜


負けました。また。

まだ試合は二度目だし、練習してても「こんなことも出来ないんじゃダメだろ」、と密かに思ってはいた。
そして試合でもそのとおりの展開になったので、その点ではいまの実力相応の結果だったと思う。
前のエントリで「自分らしく戦いたい」、なんてカッコつけたこと書いたけど、まあその予言どおりではあったというか。


ここからまた練習していくしかない。そう思うけど。
でもやっぱり、負けるのは悔しい。いや、悔しいと言うより、自分の至らなさを突きつけられて落ち込む、というニュアンスの方が強いかも。


なんでこんなことも出来ないんだろう。そう思うと自分の不甲斐なさに泣けてくる。
最初にポイント取られたヒップスローなんて、散々練習でやられたパターンだったのに。一回だけ体勢ひっくり返すことが出来て、先生の「パスパス!」と叫ぶ声も聞こえたけど、そこでポイント取ることは出来ず。


最後はバック取られて、そのまま思いっきり腰曲げられてタップ。ニ試合目にして見事に一本負け。

最初から余裕たっぷりな笑顔の対戦相手・Mさんと違って、こちらはずっと肩に力が入ったまま、技術ナシ・力で押すのみのいつもの悪いパターンのまま、3分ほどで試合はケリがついた。
 

白状すると、三回泣いた。


一度目は自分の試合後しばらくしてから、遅いお昼ご飯を食べてたとき。

試合の続くマットをぼーっと見下ろしながら、用意してきたお弁当を食べる。
「もう空腹に耐えないでぜーんぶ食べていいんだ♪」と思って、朝にはちょっとウキウキしつつ多めに詰めてきたのに。食べていいとなってもちっとも食欲が出ない。


隣には先生とT田さんの息子さんたちが遊んでたし、ちょっと離れたところにマスターもいたのでガマンしたけど。
無理やり口に箸を運んでもぐもぐしてないと、気を抜いたら涙がこぼれそうだった。堪えたけど、あそこでもし自分一人きりだったらマジで泣いてたはず。


二度目は家に帰ってきてから、試合前〜試合後にもらったメールやTwitterFacebookのコメントに返事打ってるとき。
試合中は余裕がなくて全部は読めてなかったけど、結構たくさんの人に「頑張って!」とか「お疲れさま」と言われてたのにあとから気づいた。
メールで試合結果を送った人の中には、早速慰めてくれたり、励ましてくれた人もいた。


一人ひとりに返事を書きながら、「でも結局、それに応えることは出来なかったんだな」、と思った瞬間。
ぱぁーっと目の中が熱くなって、パラパラパラッと涙が落ちた。あー、ついに来たか。自分でもそう感じた。

何食わぬ顔で家族の横をすり抜け、トイレの中で声を出さないようにこっそり泣く。


一人になれたらいいのに、と思ったけど。家族持ちの悲しさ、笑顔で面白おかしく試合の悲喜こもごもを話して、普通に大河ドラマとか見たりしなくちゃならない。
一応大人だし、それは仕方のないことだ。

そもそも今回、試合に出ることでずい分家族にもしわ寄せが行ってたし。母親が夜にいない寂しさをガマンしてくれた子どもたちの前で、暗い顔でいるわけにはいかない。


三度目は家事の諸々を終えて、ようやく布団に潜り込んだとき。

あー、終わったんだなあと思った瞬間、また込み上げてきてしまった。
隣で子どもたちはもう眠ってたけど、やっぱり声を上げて泣くわけにはいかず。


うっかり、試合直前のアップにつきあってくれたマスターが、緊張MAXの自分に「大丈夫ですよ、勝てますよ」そう言って笑って送り出してくれた顔と声を思い出してしまったら、もういけない。

頭っから布団をかぶって、気持ちの高ぶりがおさまるまでひたすら耐えるしかない。

――全然、大丈夫じゃなかった。ごめんなさい、不肖の弟子(非公式)で。


あとから見た動画には、先生が指示を出してもちっともそのとおり動かない自分に対して、「聞こえてないのかな」とつぶやく声が入っていた。

――聞こえてました、全部。でも、言われたとおりにやりたくても出来なかったんです・・・


最初にタックルから入ろう、と思ってたし、先生の「タックル!タックル!」という声も聞こえてたのに、Mさんの右脚がちょっと遠かっただけで飛び出してタックルかける勇気が出なかった。


クローズドで捉えられた時、腕を残しすぎ、と言われてたのもわかった。でも、相手が起き上がってくるのが怖かった。
抑えつけてないととにかく不安で、でもそんなバランスの悪い体勢はあっさり引っくり返されてしまうのがオチだ。練習で散々いろんな人にやられたのに、同じパターンをまんまと踏んだ。


こっちは次のアクションにいくまでについ一呼吸ついてしまうのに対して、Mさんは防御と反撃がセットになってるから、チャンスがあればそこはきちんとモノにしていた。

強い方が勝って、弱い方が負ける。彼女が勝ったのは当然の結果だ。


まだたかだか二度目の試合で、負けたことをあまりネガティブに感じすぎない方がいいんだろう。これから回数を重ねれば、勝つこともあれば負けることもある。そんな風に思えるようになるかもしれないし。


でも、今日は泣きたかったし、泣いていいと思った。今日くらいは、そういう自分を許してやりたかった。
結果的に実力は及ばなかったけど、練習とか減量とか、自分に出来ることは全部やったつもりだったから。


今回の経験を次の練習にどうやって活かすか?なんてことは、とても今日は考えられない。泣いてやる。落ち込んでやる。
そう開き直ったら、ちょっとずつ気持ちが落ち着いてきた。


ひとしきり泣いたあと。
子どもみたいに布団の端でゴシゴシッと涙の跡を拭いて、夢も見ずにそのまま眠りの海の底深く沈んでいった。