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昭和11年2月26日に起こった青年将校らによるクーデター未遂事件――であることは、その昔教科書で習ったものの。知識は今回改めて確認しつつ鑑賞。

時代は違うけど、自分の中では先日再見した「八甲田山」から続く日本近代戦史のおさらい、ということで。



※事件の詳細はこちら→

1989年の6月に公開されてるけど、この1月に昭和天皇崩御、昭和が終わり元号が平成に変わった。そんな年に公開されたというのも奇遇だなーと思ったり。


青年将校たちの蹶起前の密談から始まり、重臣襲撃に至る最初の25分くらいが、はっきり言って一番盛り上がる。あとはひたすら時系列に沿って、よく言えばドキュメンタリータッチ、悪く言えば盛り上がりもなく淡々と、というかはっきり言ってなんとなくダラダラと彼らの甘い計画が瓦解していくさまが、90分くらいひたすら続いていく。

彼らの蹶起する思想的バックボーンもほとんど説明されないため、一度見ただけでは肝心の「そもそも、なんでこんなこと実行する気になっちゃったの!?」がよくわからないのだ。


キャストはかなり豪華だけど、そんな感じなので登場人物たちのだれに共感するのも難しいし、ネットで評判を調べてみてもやはり同じような感想も多い。んだけど。

襲撃当初、雪の中を軍靴の足音を響かせながら歩く兵士たちの姿を延々見てるだけで、なんだかゾクゾクしてしまう。


ミリオタさんほどの兵器の知識もないし、もちろん右方向の思想もないのだけど、日本男児の短髪、軍服姿は単純に好きなんだよね〜。

特に、一番似合ってるのがモッくん(本木雅弘)!

坂の上の雲」での海軍軍人・秋山真之役もよかったけど、陸軍の軍服姿もまたいいのよ、これが〜♪


撮影当時23,24歳と思しき彼の初々しい凛々しさが、「狂カ愚カ」*1という青臭い狂信性にピタリとはまっている。174cm、68kg(公称)、決して大柄すぎないところがじつに昭和の軍人ぽくてよい(最近のモデル出身の人とかだと、明らかに背が高すぎるんだよな〜)。


都内を襲撃、占拠した他の隊と異なり、一路湯河原へ向かうモッくんこと河野隊。旅館に宿泊していた牧野氏を襲うものの失敗、河野も重傷を負ってしまい隊に戻ることはできなくなる。

入院先である熱海の病院から、任務を完遂できない無念さを電話で伝える場面や、見舞いに来た兄に「腹、切りたいんだけど」と自決用の刃物を所望する場面等、非常に見せ場が多い。何度彼の登場するシーンだけリピートしたことかw

ここの12:50あたり〜)


なんでこんなに盛り上がらないのかな〜と思ったけど、何度も見てるうちに「盛り上がらないのがいいんじゃないの?」という気分になってきた。


あっさりとした描写ながら、彼らの妻や子との和やかなシーンや、夫や父を暗殺される重臣たちの妻、子どもたちの存在も挿入されていて、暗殺の事実に彼ら自身が苦悩する場面も出てくる。

青年将校たちは、決して血気盛んな狂信的集団として描かれてはいないのだ。けれど、それだけで彼らのしたことに共感はできない。


むしろ、貧しい農村の状況をなんとかしたい、そのためならきっと天皇陛下だってこんな大それたことをやる我々を認めてくれるはず!という思い込みだけで作戦を遂行してしまい、結果クーデターは未遂に終わりロクな裁判も開かれずに銃殺刑、という愚かさを示すために、わざと英雄視したりドラマチックな描き方にしてないんじゃないの?とすら思えてくる。


千住明のテーマ曲が、ストーリーと相反するかのようにドラマチックでよい。これも何度も聴いたw


彼らの狂・愚をドラマの中では持ち上げない分、たおやかで芯の強そうな昭和の美人女優を配し、見事に再現された昭和初期の東京に力が注がれている、この映画としてはどうなのよ?なアンビバレンツさ。

全然褒めてないような気もするけど・・・私はこの映画、好きです(^^♪

*1:映画の冒頭、蹶起にあたり野中大尉が「ワレ狂カ愚カ知ラズ/一路遂ニ奔騰スルノミ」とハンカチに書く場面が出てくる。