友だちだった人

一年ぶりくらいに知り合いが電話をかけてきた。もう友人と呼べるつき合いはないけど、以前はよくみんなで飲みにいった人。


相変わらず繰り出される下らないオヤジギャグの中からチラホラ、彼がここ最近世の中とどう向き合ってきたのかが垣間見える。
離婚して一年経つこと。最近いろんな交友関係から縁を切られてるのではないかと思って淋しいこと。仕事がうまくいっていないこと。まだ鬱病の薬は飲んでいること。消えたいと思う気持ちになること。


私にだって、大したことなんか言えない。本当に大した暮らしはしてないのだ。仕事だって、全然だよ(お金にならないことの方に夢中だったりするし・・・はぁ)。

甘えん坊がその淋しさのあまり周囲の人間関係にすがりつき、かえって孤独になってしまう。彼はその典型だ。昔モテた人なので、特に女性に甘えたがる。そこがよくない。それをハッキリ言った。女の人はさ、基本優しいから黙って話聞いてるけど、2度まではよくても3度目だともう怒るよ、普通。そう言ったら。

「ダメならダメって、言ってくれればいいんだよ。あなたはそういうとき、バシッと言ってくれるでしょ。そうしてくれないとオレ、わかんないんだよ」

それが甘えなんだよ!と言ったけど、本当に自覚なかったんだろうか?絶対わかってると思うけど。


淋しさってものすごい毒だ。どんどん自分の身体を蝕んでいく。それを昇華出来るアーティスト系の人であればともかく、普通の人間が持ち続けるのは荷が重すぎる。

自分が柔術を始めようとしてることを告げた。運動するとさ、きっと気持ちも軽くなっていいと思うよ。私も去年の前半、結構精神的にキツくてやばかったけど、だからこそ身体を動かしたり外へ出ることは大事だと思うんだよね、と自分の話も交えつつ。

あまり乗り気ではなかったみたいだった。彼はこれまでずっと好きだったジャンルで、成功したいんだろう。それでうまくいくなら、それが一番いいね。


私に出来ることは、本当に少ない。

雨の休日。受話器を置いたあと、ほんの少し彼のために、祈った。