打診


年度末半期締めの日。会社に顔を出すといきなり某室長に呼ばれた。


「ちょっと打合せ、いい?」

「はい」


・・・ひょっとして。来るべきものが来たか。

私の仕事は会社でやる部分もあるけど、実際には社員ではない。この会社から業務委託で仕事をもらっている、しがない自営業者の一人だ。


ある役員さんが実質的な後ろ盾になってくれていて、いままでなんとか首がつながってきた感があるものの。
その人もこの夏で退社。この不況もあり、いつ契約打ち切りになってもおかしくない弱い立場だ。は〜、ついにきたか。しかしこの仕事なくなったら次どうしよう?と覚悟しつつ打合せの場に向かうと。


なんと。仕事増やしてもらえるかもしれない、とのこと。

役員氏が退社するとき、後任の部長さんたちに「子どもも多少大きくなってきたし、もう少し仕事量増やせますよ。お仕事下さい!!(=いまのまんまじゃ、時間の融通利くけど取り分少なすぎンだよ!)」、とさり気なく(?)アピールしておいたのがよかったらしい。


いま仕事している部署とは別の部署での業務になるけど、内容的にはさして変わらない。何のスキルアップにもつながらないが、いいのだ、そんなことは。私の仕事は飯のタネ、スキルアップは別で図ればよい。


「じゃあ、そっちの部署の部長さんに話しは通しておくから」

「よろしくお願いします」


正社員で普通に給料もらって働いてるときには、仕事の内容が変わったり増えたり、そんなことは自分のあずかり知らぬ世界だった。
会社にはその年度、その部署に達成させたい目標があり、それを受けて勝手に仕事のバリエーションが増えていく。どう変遷するかは会社が考えることで、運がよければ自分の意向が反映されることもある。それが平凡な人間にはどれだけありがたいことだったか、今の不安定な立場になったからこそよくわかる。


会社からもらう仕事にしがみついてるだけじゃ、何か起こったときに不安だから。そう思って、新規顧客を開拓すべく営業努力的なこともしてみたけど。
飛び込みで現場行っても、胡散臭い顔されるだけ。そりゃそうだ、会社組織をバックに持ってない中年女、だれが信用して金払うかっての。名刺、チラシ、Web等々、いくら営業ツール作ったって安心はしてもらえない。説明すら聞いてもらえない。当たり前だ。

人脈がないといえばそれまでだけど、自分の知合いや友人とお金を媒介する関係になるのは、とても難しい。一緒にランチしておしゃべりする程度の友人しかいない自分には、そこをきっかけに仕事を得ていくなんてことは、なかなか出来なかった。新規開拓営業に関しては、いまのところ敗北感しかない。


もちろん、相手にとって「この人のサービス使うと便利そう」と思ってもらえるに至ってないのは、自分の力不足という自覚はある。正直にいって「自分の売り」がまだつかみきれてない感覚もあるし。ただ就活なんかもそうだろうけど、ある一定期間に何連敗もし続けることに関して、人間てそんなに耐えられるものではないのよね・・・


新しい技術の習得も、やろうやろうといいつついつも先送り。ツイッターやったりブログ書いてる間に勉強せえよ、まったく。我ながらそう思う。
毎日いまある仕事と家事、子どもの世話だけ最小限にやってぼちぼちつぶやいて、たまの柔術でようやくドキドキやワクワクを注入する。それだけであっという間に月日が流れて行ってしまう。ここ数か月はそんな感じだった。


不安な気持ちをどこかに吐露しても、現状がよくならないことはわかっていたので特にここに書いたりはしなかったけど。

仕事がうまくいってるかどうかは、自己評価の根幹になっちゃうんだよな。他者の評価が自己評価ってのは、あまり依存するとよろしくないのはわかってる。
でも、やっぱり誰かに乞われて仕事をもらえる。そのことは素直にありがたいことだと思う。


まだ本決まりじゃないから、あんまり浮かれちゃいけないんだけど。

下半期からも、いいサイクル回していけますように。

頑張ろうっと。