懐かしや「ポケベルが鳴らなくて」


池田さんが出演してる、という話題以前に。大好きなんですよ、このドラマ。
タイトルからしてもう、20代〜30代前半には「ポケベル?なんだっけそれ???」じゃないかと思うけど。


大学生の娘がいる中年男性・水谷誠司が、よりによって娘の友だちである保坂育未と恋に落ちる。挙句に家庭を棄てる。あり得ない。いま見ても無茶苦茶な設定のドラマですよ、はっきり言って。
しかも今回、再放送で見直してみても、二人が恋に落ちる理由がなんとなくはっきりしない。これ、特に中年男性を演じていた緒形拳さんはどう考えて演じてたんだろう?とか思っちゃうけど。


緒形氏が演じる水谷誠司が恋に落ちてしまってからの姿は、もうとんでもなくキュート。たまらん。最初は年齢相応に娘を気遣う父のような態度なのに、奔放な育未に振り回されているうち、年甲斐もなくときめいてしまう。そんな自分の気持ちの変化をもてあましつつも、どんどん「家庭の父」「会社の部長」という表の仮面が外れ、素の「水谷誠司」になっていく。

恋に走り出すのではなく、「え?え?どうしたらいいんだ、これ?」って感じに戸惑いながら歩いていく誠ちゃんの姿を、緒形氏はとても魅力的に演じていた。


ラブストーリィというよりこれは、一人の男性の内面の崩壊と再構築の物語だ。
だから、彼の変化に触媒として関わる育未のキャラクターは、あまりはっきりしてなくてもいいのかも。
ファンタジーなんだと思う、結局。


この手の話では、じつはヨン様の「冬のソナタ」も私の中では同じ範疇に入る。
一人の女性との出会いを通して、父の不在を乗り越える青年の話、というか。
そうか、つまりこういう構造のお話に私は弱いのだなw 私にとってこれは永遠のテーマなのかも。
(おこがましくも、冬ソナではユジンではなくカンジュンサンに、ポケベルでは誠司に感情移入する私・・・ヘン!?)


というわけで、放送当時は池田聡出演作品としてあまり認識はしてなかったんだけどw(失礼)、でも彼がドラマのいいスパイスになっていたことは覚えていた。
話しがシリアスだから、どうしても脇にくすぐる人がいないと、重くてしようがない。誠ちゃんの友人役である谷啓氏や、息子役である池田さんの役どころはそれだ。火遊びのせいで離婚して独身のカンチャン、まったくモテなくて振られ続けてるくせに惚れっぽい和也はとても愛すべきキャラクターで、この配役はピッタリだなと今見ても思った。

最初は父親を茶化しつつ、意外や本気なのを知ってびっくり。家庭内では母と妹という女性陣を敵に回す父の、唯一の味方でもあり。いいお兄ちゃんだよね、和也君。
それでいて、これじゃモテないのもわっかるな〜、という感じw ヘンなとこマイペースなんだよな。こういう人はきっと、自由恋愛市場ではなくて、お見合いという形で幸せをつかめるのではなかろうか?と、これは余計なお世話。


ポケベルという、一方向からしか連絡できないツールのもどかしさもまた、ドラマの切ない展開に似合っている。
携帯だと、その気があってもなくても電話に出なくちゃいけない、という形の双方向性があるけど。ポケベルは常に「電話して!」と発信した側が、相手からの返信を待つしかない道具だ。そこがいい。電波使っているけど、道具としては手紙みたい。


最終回でついに二人が電話で話すシーン。これがすごく好きで。
物理的に電波が通じるということと、二人の関係の永続性が食い違う。交差する思い。受話器を握りしめる誠ちゃんのあの独白、忘れられない。17年前の本放送後一度も再放送見てなかったのに、今でも覚えてるもん。
あ、いかん。思い出したらなんだか泣けてきた。誠ちゃ〜ん・・・!


時間差とか、お互いを思う気持ちのかけ違いが、恋愛ものの醍醐味。その点でこれはまさに王道を行くラブストーリィだ。加えて、恋愛ドラマの顔をしてじつは、ずーっと家族に守られてた男の再生物語、という点で、私の中ではエバーグリーンに近い存在だ。

そういえば同年に放映された「高校教師」と、最初の頃の二人の関係(年下の女が社会的立場のある年上の男を誘惑する)はちょっと似てるね。


この当時のドラマは、結構ベッドシーンでバンバン脱いでたり残虐なシーンがあったりした記憶があるけど、育未と誠ちゃんがどこまでの関係なのか、確かはっきり描かれてなかったと思う。いや、大人だから推して知るべしなんだけどw、直接的にそういう場面を描いてないところも好きだった。
あんまりそこ描いちゃうと、「なんだよスケベ親父、結局若い女のカラダ目当てかよ!」ってなっちゃうもんね。

でも家を出ていく父親を平手打ちする娘とか、家にきた育未の飲みかけの紅茶のグラスを叩き捨てる妻とか、そっちは激しかったなあ。ああ、オンナって怖い・・・!


と、ことほど左様に愛すべき作品なので。今回の放送に当たっては「絶対録画する!」と相当気合い入っておったのですが。

・・・なんと、1話〜9話まで放送が済んでいる現在。最初の3話分以外、すべて録画を失敗しております・・・うちのHDDレコーダー相当古いもんな。はあ、がっくり。


と思ったら。
11月に再度放送される予定が!*1 ありがたい!

もうさー、この際新しいHDDレコーダー(しかもできればブルーレイで!)買っちゃいたい!
ちくしょー、なんとかならんかなー。
今度こそは絶対にコンプリートしたいぞーーーーー!!!

*1:谷啓氏逝去のためらしい。CSの日テレプラスのサイトにあったので、間違いないかと。http://www.nitteleplus.com/program/drama/pocketbell.html