ブタがいた教室


三連休、実質もう夏休み気分の子どもとその友だちを連れて、近所で催されてた映画鑑賞会へ。

ブタがいた教室」。ある小学校の6年生に新任教師が着任していきなり、「ブタを一年間飼育してその後食べよう!」というあり得ない教育計画が受け入れられちゃう展開は、もう思いっきりファンタジー

実際はPTAや保護者ともっとモメそうだし、自分が当事者だったら安全面や衛生面でやはり不安を覚える気が。


でもそんなことはどーでもいい。ファンタジーなんだから。

この映画はとにかく、「一年間手塩にかけて育てて、クラスの一員、仲間となったブタのPちゃんを食べる?食べない?どうする???」、と必死に考える子どもたちの、迫真の討論シーンがとてもいいのだ。

他にある多少の欠点は、あのシーンの美しさですべて帳消しになる。
ある程度映画の中で中心になる、3人ほどの子役たちの演技が特によい。


転向してきてなかなかクラスに馴染めないハナ*1は、Pちゃんのお陰でみんなと仲良くなっていく。当然、Pちゃんを食べちゃうのには反対。

家が飲食店をやってるユーマは、Pちゃんは好きだけど父の仕事にも誇りを持ってるから、食べること=命を奪うこと、とは考えたくない。*2ハナと同じくPちゃん擁護派のリキヤとは、意見の衝突からたびたび激しい言い合い、つかみ合いになってしまう。


このユーマ君の演技がとてもよい。私好みw どの子にとっても、Pちゃんをどうするか?の議論を重ねるシーンの演技が一番いいのだけど、ユーマ役の大倉裕真君には、その年齢もあってじつに微妙ないい表情をする瞬間がいくつもある。

小学校高学年〜中学2年生くらいまでの間かな。男の子がコドモから少年になってく、その淡い狭間にいるというか。
この時期の彼の表情を、演技という形でスクリーンに残してくれたことに感謝します。ありがとう!>前田哲監督

リキヤ役の樺澤力也君もなんだけど、この後はもう、どんどん男優さんになってっちゃうんだろうなあ。うむ、惜しい、じつに惜しいぞ。


なんかショタ礼賛になっちゃってるけどw、私はこの映画、ファンタジーとして受け取りました。そして素直によく出来てるな、と。
子役の演技に泣きたい方にはオススメです。


原作やそれに沿ったドキュメンタリーの焼き直しに過ぎない、という批評も読んだ。そもそもこの先生が勝手に子ブタ連れてきたくせに、子どもにばっかり考えさせて教育者失格じゃないか、とも。

私は、教育方法の是非を問うため、この映画が改めて作られたのではないように思った。
真剣に討論する子どもたちの瞳。あの強さ、たくましさをこそ、監督は描きたかったのじゃないかな。
命というテーマを与えられれば、原作の子どもたちも、その後20年経った現代の子どもたちも、それぞれ真摯にそれに向き合っている。そこが一番描きたかったのじゃないか。
そんな風に思った。


子どもが子どもとして気高い存在である時期は、振り返って見るととても短い。
その貴重な時間をこうしてフィルム上に残せた彼ら・彼女らは幸運だと思う。


私が好きな少年ものの映画には「どこまでもいこう」「いちご同盟」があるのだけど、この「ブタがいた教室」もその後に続きそう。
テーマのこととかあまり難しく考えず、子どもたちの演技を見るためだけに見てもいいんじゃないかなー、とそんな風に思いましたです。


【追記】
池田さんが絶賛したけど絶対観たくない!と思ってた「告白」。ユーマとリキヤが出てるというので俄然興味がw 

*1:コドモのコドモ」で小学生妊婦を演じた甘利はるなちゃん。末恐ろしい女優さんになりそう・・・

*2:「食べることは殺すこととは違う。殺すのは命を奪うことだけど、食べるのは命をいただくことだ!」って言い放つシーン。これが自分オリジナルの台詞なのだとしたら、この子すごいなーと思った。