かもめ食堂

かもめ食堂 [DVD]

かもめ食堂 [DVD]

 
はら〜、気がついたら一週間更新してなかったのだね>blog
秋口はどうにも体調崩しやすくて、仕事と日常をこなすのでヘタり気味なんだよな・・・とか言ってるくせに


じつは今週、2回も「かもめ食堂を観に行ってしまったのだ
地元の映画館にやっと来たので通いやすかった、というのはもちろんあるけど、それにしても気に入った一番の理由、それは・・・「映画の中が片付いているから」


嫌われ松子の一生」の松子の部屋とまではいかないけど(笑)、常になんやかんやで乱雑になりがちな我が家。でもすっきり片付いた空間には猛烈に憧れてるので、あの食堂の風情を見たくて通った、というのがリピートした理由としては一番大きい。作品の出来云々、だけじゃないのだ


現実逃避の道具として映画を使うとき、家でDVD鑑賞だとどうしても部屋の中の日常から抜け出せない。でも、映画館に行くとそういう諸々から約2時間、スッパリ切り離される。これが一番嬉しい
といって、自分の今の状況としてあまり過度な現実逃避は許されない柵(しがらみ)もあるので(苦笑)、チャリで通える映画館でおいしい料理が次々に出てくるのをぼーっと眺めていられる、という状況はまさに理想的だった


で、肝心の映画の方ですが
言うまでもなくこの話は現代のお伽噺だろうけど、特に日本人にとっては寅さん映画みたいなとこがあると思う。年齢層の高い人からも支持があったのは、そういうことだろう


小林聡美(サチエ)・片桐はいり(ミドリ)・もたいまさこ(マサコ)の三人のアンサンブルだけで笑える部分はあるけど、それでもやたらと繰り返しで笑いを取る場面、特にもたいまさこが出てくるあたりのリズムは、まさに寅さん映画だ
かもめ食堂」は柴又のあの団子屋で、優しくてちょっと淋しい人たちが集まってくる。サチエさんのきりっとした風情は、看板娘のさくらそっくりだ


違うのは、おいちゃん、おばちゃんのような下町の人たちがずけずけと人の心の内に入っていって、悩みをなんとかしてあげようとするんじゃなくて、どうするかはあくまでその人次第。三人はつかず離れずの位置で黙って立っていて、人生を歩き出すために必要なハラゴシラエの手伝いをするだけだ


三人の女性はそれぞれにつらく、切ない思いを秘めてフィンランドまでやってきているらしいけど、映画の中では彼女らの渡航理由は明確にされない。親の介護が終わったから、というマサコさんだけその理由が明らかなのは、どうみても50代以降の年齢の女性が一人旅する不自然さをカバーするためだろう
サチエさんやミドリさんだったら、「仕事生活に疲れたか、ひょっとして失恋かな?」という想像が痛々しくなく出来るし、実際ミドリさんは失恋だと思うんだけど・・・違うかな?*1


で、評判に違わず、出てくる「かもめ食堂」のメニューはどれもおいしそうで、食べれば元気が出てきそう。でも、それだけだったら多分、二度は観に行かなかったと思う
やっぱりあの食堂のインテリア−高い天井や間口いっぱいに開いたしみ一つない白木のテーブルと椅子 等々−や、あと、出てくる食器や道具類が紡ぎ出す静謐な佇まいや空気感を、何度も体験したかったのだ


本当の人生はこんなもんじゃなくて、あんな風に軽やかで乾いていて、すっきりと心地よいわけではない。むしろ正反対に重ったるく湿ってて、ごちゃごちゃで不愉快なことも多い。でも、だからこそ、あんな童話をみんな観たかったんじゃないだろうか?


劇中、「人は変わっていくものだから」とサチエさんが言う。「TOKYO EYES」の中でヒナノは、「変わるのはいつだっていいことよ」と言うけれど、ある程度の年齢になってくれば、歓迎したくない変化だって人生には付き物だ、ということはわかってくる


満員になった「かもめ食堂」だけど、その厳しい寒さと日照時間の極端な少なさから鬱病を発症し、多くの自殺者を出すほどというフィンランドの冬を本当に無事越えていけるのか?・・・正直いって、心もとない。けれど


ミドリさんとマサコさんが心の底から賞賛する、サチエさんの「いらっしゃい!」。あれはやっぱり、人生のいろんなことに対する、監督の荻上直子氏なりのエールなんだと思う


すでにDVDの発売が9/27に決まっているようで、現在、湧き上がる購買欲と戦っているところ(苦笑)。ただ問題は、うちのとっ散らかった部屋の中で見てガッカリしちゃわないかなあ?ということなんだけど・・・

 

*1:片桐はいりだから笑われてるけど、ミドリさんはすごくいい子だと思う。私が男だったら絶対惚れる!と思う。遠慮がちで親切で努力家で、そして明るい。こんな「嫁」が私もほしかった・・・